切文字加工における素材別の注意点
2025.5.20| アクリル文字アルミ複合版文字カルプ文字切り文字立体文字
看板や立体文字サインを製作する際、使用する素材や加工方法によって表現の自由度や耐久性、コスト、そして安全性に大きな違いが生まれます。
今回は、看板業界で頻繁に使われる「カルプ」「アクリル」「アルミ複合板」の3素材について、その加工方法と限界、ご注文にあたり注意すべきポイントについて詳しく整理いたします。
1.カルプ素材のNCルーター加工における限界と注意点
カルプ(発泡ウレタンボード)は、その軽量性と加工のしやすさから、立体文字サインや店舗ロゴの素材として非常に人気があります。
弊社でも使用しているNCルーターでの加工においては、非常に自由な形状が可能ですが、最小加工サイズや厚みには限界があります。
まず、カルプ材で最も重要な制限が「最小文字サイズ」です。
目安としては、アルファベット文字でおおよそ50mm〜60mmが限界です。
これ以下になると、細かい部分が表現できなかったり、バリが出たりして美しく仕上がりません。
さらに、文字の細い部分(線幅)は最低でも5mm以上を確保することが推奨されます。
細くなると、加工時の欠けや輸送中や施工時の破損が起きやすくなります。
また、NCルーターでの加工は、エンドミルと呼ばれるドリルが回転しながら切削を行うため、文字の内角部分は直角にはならず、若干丸みを帯びる仕上がりになります。
加えて、筆文字のようなカスレの表現は出来ず、文字のハライのような鋭角に尖った部分は、エンドミルの回転により側面の発泡ウレタン部分の形状を保つことができないため、データ段階である程度丸みを持たせる必要があります。
2.アクリル素材のレーザー加工における限界と注意点
アクリルは透明感や高級感があることから、店舗サインや案内表示、装飾パーツに幅広く用いられています。
レーザー加工はその精密さと仕上がりの美しさが魅力ですが、こちらも加工サイズに制約があります。
最小文字サイズはアルファベット文字でおおよそ20~30mm程度が限界です。
線幅は加工する厚み分を確保することが推奨され、細くても3mm以上は必要となります。
細すぎると貼り付けたシートが焦げ付いたり、熱による溶けや割れが発生してしまいます。
また、厚みの制限もあり、弊社のレーザー機では5mm程度までが加工しやすい範囲です。
それ以上の厚みでは、焦げや切断面の曇りが顕著になり、手直しが必要になる場合もあります。
さらに注意すべきは、アクリルのカット部分が熱で変質しやすい点です。
特に透明アクリルでは、レーザー照射面と反対側で白く曇ることがあり、裏面加工の際は特に注意が必要です。
また、細いパーツでは反りが起きやすく、仕上がりに影響を与えることがあります。
加えてレーザー加工後のアクリルをアルコール(エタノール)で拭いたり、溶剤等を使用するとクラックと呼ばれる亀裂が生じることがあるので注意が必要です。
3.アルミ複合板のNCルーター加工における限界と注意点
アルミ複合板(通称:アルポリ)は、軽量で剛性が高く、かつ耐候性にも優れているため、屋外看板の定番素材です。
NCルーターを使えば美しい切り抜きが可能ですが、加工にはいくつかの注意点があります。
最小文字サイズはアルファベット文字でおおよそ30~40mmが目安で、これを下回ると、エッジ部分のアルミ皮膜が剥がれたり、欠けが発生しやすくなります。
線幅に関しては最低5mm以上を確保することが望ましいです。
細すぎると、細かい部分が表現できなかったり、強度が保てず折れなどの破損の原因となります。
また、アルポリは切断後にエッジ部分の「アルミ皮膜」がめくれたり、バリが出たりしやすい素材です。
特に角部は0R(小さな丸み)処理になりがちで、シート貼りをしたアルミ複合板を加工した場合、加工時に表面のシートがめくれ上がってしまうため、シャープな鋭角は難しくなります。
そのため、カルプ素材と同様にデザイン段階から角の処理について意識する必要があります。
4. まとめ
素材によって加工方法やその限界値、注意点は大きく異なります。
いずれも文字が小さな場合は、加工自体が可能であっても、取り付ける段階で接着面が少ないため、上手く張り付かない恐れもありますので、その点にも注意が必要になってきます。
また、最小加工サイズについて記載していますが、実際は加工する文字の書体やデザインによっても加工可能なサイズ等が異なってくるため、お持ちのデザインデータで加工が可能か、まずはお気軽にお問い合わせください。
今回ご紹介した「カルプ」「アクリル」「アルミ複合板」は、いずれも業界で非常に多く使われている素材ですが、加工方法と注意点をしっかりと理解する必要があります。
弊社では、お客様により満足いただける切り文字をお届けできるよう、注意点を踏まえたご提案をさせていただくとともに、日々、切文字加工における技術の研鑽を重ねてまいります。